レモンザムライ
レモンサワー専門店のレモンとレモンサワー

ICE & GLASS

レモンサワーは氷とグラスで変わる
専門店が使う「溶けにくい氷」と「薄いグラス」

執筆・監修:レモンザムライ(レモンサワー専門店「曖昧時空 URBAN LEMONERY」運営)

先に答えを言います。家のレモンサワーがお店と「なんか違う」いちばん大きな理由は、レシピではなく氷とグラスです。氷は、冷凍庫の製氷機のものではなく透明で溶けにくい氷(袋のロックアイス)を、大きいまま、グラスの上まで。グラスは薄くて大きいもの。ぼくはレモンサワー専門店をやっていますが、この2つを替えるだけで、同じレシピでも一杯の印象がはっきり変わります。この記事では、その理由と選び方を実体験でお話しします。

「なんで店のほうが美味しいの?」と聞かれ続けた

ぼくの店では、レモンサワーのレシピを聞かれたら全部お伝えしています。隠し味はありません。それなのに、レモンを買ってくれたお客さんから、いちばんよく聞かれる質問がこれです。「言われたとおりに作ったのに、お店のほうが美味しい。なんで?」

実はぼく自身、20代のころ六本木の創作料理のお店で働いていて、同じ場面を逆の立場で見ていました。名物はレタスとしらすのサラダ。塩と、ちょっとのごま油だけ。レシピは聞かれたら全部教える方針なのに、お客さんは口をそろえて「家で作ると全然違う」と言うんです。当時のぼくは「なにか隠してるんだろうな」と思っていました。

自分の店で同じことを言われるようになって、やっと分かりました。隠し味ではなく、レシピに書かれない部分の差でした。レモンサワーで言えば、その代表が氷とグラスです。ぼくも最初は「腕の差」だと思っていたのですが、違いました。道具の差は、腕がなくても埋められます。

氷:溶けにくい氷の正体

レモンサワーは氷を入れて飲むお酒なので、時間とともに必ず薄まっていきます。つまり「美味しさを保つ」とは「薄まる速さをどれだけ遅くできるか」の勝負です。ここで氷の質が効いてきます。

冷凍庫の氷と、氷屋さんの氷は別物

ぼくの店では、氷屋さんから買った氷を使っています。持ってみるとずっしり透明で、家庭の冷凍庫の氷とは見た目から違います。冷凍庫の製氷機の氷が白く濁るのは、空気や不純物を抱えたまま速く凍るから。濁った氷は小さくて崩れやすく、グラスの中で速く溶けます。一方、氷屋さんの氷は時間をかけて凍らせた透明な氷で、同じ時間グラスに入れていても溶け方がゆっくりです。最後の一口まで薄まりにくいのは、この差です。

家での現実解は「袋のロックアイス」

氷屋さんの氷は一般家庭では手に入りにくいですが、近いものがすぐ買えます。スーパーやコンビニの袋入りロックアイスです。あれは透明な氷を砕いたもので、製氷機の氷より明らかに溶けにくい。100円台の投資でいちばん差が出るポイントなので、今夜からでも替えられます。

グラス:薄くて大きいものを選ぶ理由

ぼくの店のグラスは、ジョッキ級に大きくて、飲み口の薄いものを選んでいます。理由は2つあります。

ひとつは口あたり。飲み口が薄いと、唇に触れるガラスの存在感が消えて、液体が直接すっと入ってきます。同じレモンサワーでも、厚手のコップと薄いグラスでは最初の一口の印象が別物です。マグカップで飲むレモンサワーと、薄いグラスで飲むレモンサワーを飲み比べてもらうと、ほとんどの人が驚きます。

もうひとつは大きさ。グラスが大きいと、さっきの「氷を上まで詰める」が効いてきます。小さいコップでは氷が2〜3個しか入らず、すぐ溶けてしまう。大きいグラスにたっぷりの氷、これがセットです。

そして注ぐ前に、グラスそのものを冷やしておくこと。冷蔵庫に10分入れておくだけでも、常温のグラスとは氷の持ちが変わります。ぬるいグラスに注ぐと、最初の数秒で氷が一気に削られてしまうからです。

皮ごとすりおろした国産レモンのペースト
氷とグラスを整えたら、あとはレモン。皮ごとの香りで一杯が仕上がります

氷とグラスの次は、レモンで差がつきます

ぼくの店では季節の国産レモンを使いますが、家なら皮ごとすりおろしたレモンペーストがいちばん手軽です。搾る手間なく皮の香りまでグラスに入って、レモンペーストは冷凍で3年もつので「使いたい夜にすぐ使える」のも氷と相性がいいところ。

家のレモンサワーを今夜変えるなら

氷とグラスを活かす注ぎ方

せっかく良い氷と冷えたグラスを用意しても、注ぎ方で台無しになることがあります。ポイントは「氷を削らないこと」です。

お酒と炭酸の分量は、この記事では深入りしません。レモンサワーの黄金比の読みものに早見表つきでまとめてあるので、比率はそちらをどうぞ。マドラーや炭酸水など道具まわり全体は宅飲みグッズの読みもので紹介しています。

缶のレモンサワーも、氷とグラスで変わる

「作らない日は缶」という人にも、氷とグラスは効きます。缶のまま飲むと、後半はどうしてもぬるくなりますよね。冷やした薄いグラスに大きい氷を入れて、缶を注いで飲む。それだけで香りの立ち方と飲み口が変わって、同じ缶が一段上の一杯になります。ぼくが企画しているクラフトレモンサワー缶「ザムライレモンサワー」も、店ではあえてグラスに注いでお出しするくらいです。

クラフトレモンサワー缶「ザムライレモンサワー」2種
缶もグラスに注ぐと表情が変わります(写真はザムライレモンサワーのSHUTSUJINとSPICY)

「良い氷と薄いグラスって、要は『お店がやっている当たり前』なんです。腕でも隠し味でもないから、家でも再現できる。そこが面白いところです。」

— レモンザムライ(レモンサワー専門店「曖昧時空」店主)

よくある質問

冷凍庫の製氷機の氷ではだめですか?
だめではありませんが、白く濁った小さい氷は速く溶けて味が薄まりやすいです。袋のロックアイスに替えるのが、いちばん手軽で差の大きい一手です。
ダブルウォールグラスはどうですか?
結露せず保冷も効くので良い選択です。ただ構造上、飲み口はやや厚めになります。口あたりの軽さなら薄いグラス、結露のなさならダブルウォール、と好みで使い分けて大丈夫です。
薄いグラスは割れやすくないですか?
厚手のコップよりは丁寧に扱う必要があります。洗うときにスポンジごと中で回さない、重ねて収納しない、の2点を守るとずいぶん長持ちします。
お店ではレモンをどう使っていますか?
その時期にいちばん美味しい国産レモン(秋は緑色のグリーンレモン、冬は黄色く色づいたレモン)を、手で搾らずグラスの中で棒で潰しています。果汁がぼくの体感で1.5倍くらい出て、皮の香りまでグラスに落ちるからです。

まとめ:レシピの前に、氷とグラス

家のレモンサワーを変えたいとき、多くの人はレシピを探します。でも順番は逆で、先に整えるべきは氷とグラスでした。透明で溶けにくい氷を大きいまま上まで詰める。薄くて大きいグラスを冷やして使う。炭酸は壁づたいに静かに注ぐ。どれも今夜からできて、一度そろえばずっと効く工夫です。そこに香りのいいレモンが加われば、家の一杯はお店にちゃんと近づきます。

氷とグラスがそろったら、仕上げはレモン

皮ごとすりおろした国産レモンのペーストなら、スプーンですくって潰す手間まで再現できます。

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レモンザムライ

レモンザムライ

国産レモンの卸販売、レモンサワー専門店「曖昧時空 URBAN LEMONERY」(東京・自由が丘)の運営、クラフトレモンサワー缶の企画製造を手がける。美味しいレモンサワーで世界中に衝撃を与えるために活動中。次の目標はレモンサワー缶製造工場。